傾斜センサーによる斜面監視モニタリングのマーケット開拓コンソーシアム
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斜面災害の近況とモニタリングに基づく安全の達成

東畑郁生(東京大学名誉教授、関東学院大学客員教授)

東畑郁生(東京大学名誉教授、関東学院大学客員教授)

東京大学名誉教授、関東学院大学客員教授である東畑郁生先生をお招きして、「斜面災害の近況とモニタリングに基づく安全の達成」という題目でご講演頂いた。以下その概要を示す。

(1)斜面災害の事例

  • 2014年の広島の豪雨と土石流災害では、人々が宅地を選ぶときに日当たりや交通の便を優先し、安全という視点はほとんどないことが明確になった。
  • 2018年の北海道胆振東部地震では、地震と降雨の複合効果で災害が広域に及んだ。
  • 2004年の新潟県中越地震では、兵庫県南部地震と比較して降雨が多い時期であったため斜面災害が多かった。

(2)事例中の着目点

  • 洪水ハザードマップでは危険とされているが、準工業地域での指定のため、人が居住できてしまう矛盾が課題
  • インフラの劣化はコンクリートと鋼だけに注意が向いているが、吊り橋ケーブルのアンカーの岩の風化による崩壊も発生する。一時的な点検だけでなく、経時的なモニタリングが必要である。

(3)斜面モニタリングと早期警報

  • 気象庁の土壌雨量指数による危険判定は、十分役に立っているが、あくまで5km2メッシュの危険度であり、特定の斜面は対象外である。
  • 伸縮計が有効なのは、すべり土塊の範囲が明確であり、ゆっくり動く地すべりである。豪雨による突発的な斜面崩壊は難しい。
  • 傾斜センサーの警報基準値にはデータの蓄積が必要である。これまでの経験から、傾斜速度が0.1°/hを超えると斜面崩壊は近い。また、斜面変位に換算して1mm以下の分解能が必要である。

(4)早期警報の在り方

  • 警報が必ず崩壊につながるわけではない。空振り三振は許容すべきである。
  • 見逃し三振は絶対に避けなければならない。
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